よお、Rだ。最近、商人に戻った。早くも飽きてきたぜ。早く軍人に転職したいが……。
「船長、10時方向に船影、ガリオットの模様!」
メインマストの上に登って警戒態勢をとっていた船員の一人が、甲板の上にいた俺に向かって叫ぶ。ここはカリアリ沖、北アフリカ沿岸部。俺はチュニスに向かって船を走らせていた。
「総員警戒、いつでも最大船足が出せるようにしとけ。ホセ、風は?」
「北東微風。今食われると厳しい感じです」
「クソッタレ!」
ここら辺一体はバルバリア海賊の領海だ。奴らの船は初速の速いガレーが主流で、中でも面倒なのはガリオットと呼ばれる戦闘船だ。砲門数は決して多くないが、とにかく足が速く、白兵戦に特化した船である。
「船長、奴ら足を上げました! 戦闘圏内!」
「全力で漕げ! 尻に帆をかけろ!」
こっちは非武装、必要人員ギリギリの商用ガレーだ。捕まれば一発。とにかく逃げるしかない。俺は直接舵を握り、奴らの射程から逃げつつ、チュニスを目指した。
「船長、副官が必要でさぁ。それも優秀な奴が。正直言って、俺では仕事が多すぎて……」
ホセがそんなことを洩らしたのはチュニスからの帰り、マルセイユの酒場でのことだった。
実は、そのことは考えないでもなかった。というのも、現状ではどいつもこいつも仕事が手一杯で、俺を補佐するような役目を果たせるような奴がいなかったのだ。
そこで俺はマルセイユで求人広告を出すことにした。望んだのは博物学に精通した人材。将来、冒険者として大海原を駆ける予定の俺にとって、軍人上がりや元商人の副官など考えられなかったからだ。ホセはぶつぶつ言っていたが、3日ほど娼館にしけこむことを許したら、顔をツヤツヤさせて何も言わなかった。単純なやつだ。お前にはまだまだ苦労してもらうぞ、ホセ。
俺の求人広告に応募してきた奴はフランス人だった。まあ、マルセイユだからな。言葉の違いは全く問題ではなかったが、性格的な問題もあって、一人目はあっさりと解雇した。パルマで。副官だろうが、なんだろうが、俺は労を惜しまない奴が欲しい。本ばかり読んで、甲板業務もろくにできないような奴はいらない。
2人目はさらにダメだった。こいつもフランス人だった。ネズミがでれば震え上がり、乾パンに虫がついていたと言っては大騒ぎ。こいつ、本当に船に乗る気があったんだろうか。バルセロナで解雇。
3人目はかなり期待をかけてはいたが、こいつもダメだった。こいつもフランス人だった。舐めやがって! 汚水の排水作業を怠って小麦を全滅させ、売り物の銀細工を盗みやがった。こいつはアルジェで解雇。言葉が通じないとピーピー泣いてたが知るもんか。
4人目の正直と思い、雇った奴もダメそうだった。まあとにかく失敗が多い。マストに上がらせれば目を回し、櫂を漕がせれば指に豆ができたという。しかし、こいつ、泣き言は言っても結局仕事は完遂しやがる。その根性に免じて正式雇用してやることにしたが……。
「よし、お前の名前は丸でダメ男だな!」
「な! どうしてそんな……ヒドイ! ヒドすぎます!」
「うるさい、ダメ男! お前が使えるようになったら、本名を名乗ることを許してやる! それまではダメ男だ!」
「横暴だ! 職権乱用だ!」
「ホセ、倉庫つれてけ。とりあえず、お前は倉庫番だ! それが終わったら甲板掃除! グダグダいうと飯減らすぞ!」
フランス人と俺はつくづく相性が悪いんじゃないか。俺は痛む頭を抱えながら、今日も地中海を航海する……。
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